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MGと生きる私らしい明日のために 難病とともに暮らす、難病とともに生きる

2025年5月 7分で読めます

難病治療が難しい医療過疎地であっても「住み慣れた地で自分らしい暮らしがしたい」と、北海道北見市に夫のたかおさん、8歳の息子さんとともに暮らす北村宇未(きたむら うみ)さんに、病気とともに生きる生活と心のありようについて語っていただきました。

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急に体の力が入らなくなり「いくらなんでもおかしい」

「この家は庭があるのが気に入ったんです。買った時にはまさか歩けなくなるなんて思ってもなかったけど。でも、今でも野菜を採りに行きたい、お花を見たいっていう欲が勝って、杖ついて庭に出ます。それがいいリハビリになってるかな」

北村さんは2018年の2月にMGと診断されました。今は車椅子を使って日常生活を送っていますが、体調の良い時には庭いじりをしたり、ピアノを弾いたりと好きなことを楽しみ、飼っている猫の“千夢(せんむ)”のお世話をすることもあります。

診断を聞いたときは
長年の謎が解けた思いでした

MGが判明したきっかけは、ある日突然、体に力が入らなくなり、ダイニングの椅子から落ちそうになったことでした。それ以前にも似たような症状はあったものの、バセドウ病をはじめ、他の病気を抱えていた北村さんにとって、体調を崩すのは日常でもありました。しかしこの時には「いくらなんでもおかしい」と主治医に強く症状を訴えます。しかし、地元の病院ではなかなか理解されず、札幌の大学病院からの派遣診療によってやっとのことで診断がなされたのでした。

「長年の謎が解けた思いでしたね。今までわけもわからず、気のせいとまで言われていたのが、『なんだ、国が認めた難病なんじゃん!』と。気持ち的にはすごくすっきりしました」

症状が目に見えず誤解されやすい病気

MGの症状では、筋肉がうまく動かなくなり、力が出なくなることがよくあります。「疲れているから」「睡眠不足だから」と思い込み、見過ごしてしまうことも少なくありません。さっきまでは元気に活動していたのに急に動けなくなるなど、日内での変動もあります。

見ようによっては「だらけてる」?
一日の中で移り変わる症状は理解されづらい

「高熱が出る、吐血する、肌に炎症が起きるなど目に見える症状があれば、誰でもまずいと思ってお医者さんに行ったりしますけど、MGはそれがないんですよね。『ちょっと疲れたから横になるわ』みたいな感じで、見ようによってはだらけているようでもある。本当に誤解されやすい病気だと思います。

こうして取材を受けるのも、1人のMG患者の素の日常を見てもらえたらと思うからなんです。元気そうに見えても、時間が経ったら動けなくなる。『あれ?さっきまで畑仕事してたのに、なんで今は車椅子乗ってるの?』なんてことも実際あるので、まさにそういう病気なんですよ、ということを多くの人に知ってもらえたらと思います」

北村さんのストーリー(前編)

医療過疎地域で難病にかかる負担

難病とともに生きる患者さんにとって、治療を受けられる医療機関が数少ないことは大きな課題の一つです。北村さんも、治療開始当初は毎月、北見から札幌の病院へと通っていました。

病院の帰りに動けなくなって
野宿しかけたことも

「一人で、都市間バスに乗って5時間かけて通っていました。でも帰る時にはもう、体に限界を感じて。一泊延ばそうと思ったらホテルが取れなくて、札幌駅周辺で野宿しそうになったことがあります。コンビニの前の植え込みに座り込んじゃって。たまたまホテルのキャンセルが出たから良かったですけど、その連絡がなかったら確実に外で一晩過ごしてました」

この苦い経験を経て、一時期は札幌市内に単身移住していたことも。医療過疎地で難病にかかった場合、医療費だけでなく交通費や宿泊費もかさみ、さらに住まいや仕事を変えるなどさまざまな負担を強いられることにもなります。結局北村さんは、住み慣れた北見に戻ることを決めました。

「自分にとって暮らしやすいことが一番だと思うんです。私はやっぱり土いじりできるところじゃないとダメだと思って。今は幸い札幌までは毎月通院しなくてもよくなり、普段は北見の病院でも診てもらえます。今後、オンライン診療などが進歩すれば、医療格差ももっと解消されるんじゃないかなと期待しています」

病気で人生終わりじゃない、新しい自分との出会いも

MGを発症して体が思うように動かない生活になっても、庭いじりやピアノなど趣味を楽しみながら暮らしている北村さん。診断されてしばらくは気分が沈む日々も当然ありましたが、病気を受け入れてからは、気持ちがすっと軽くなったといいます。

病気を受け入れてからは
ニューバージョンの自分に出会えた

「MGという診断がついても、人生終わりじゃない。車椅子になっても楽しめることはいっぱいあります。私は一人で自由に出歩くことはできなくなったけど、そのおかげで息子といられる時間は増えましたし、障害者手帳をもらったのをきっかけに詩吟に出会って、今ハマってるんです。こうして取材を受ける機会もなかったでしょう。それまでの人生では予想もつかなかったことが起きる。ニューバージョンの自分、という感じです。

闘病、という言葉が私は好きじゃないんですよ。ただでさえ病気で大変でつらいのに、“闘”なんてすごい力のこもった字を使うのはやめてーってかんじです。代わりに言うなら“with 難病”かな。難病と “ともに” 暮らす、難病と ”ともに” 生きる。立ち向かうんじゃなくて、楽しいことも考えながらやり過ごすというスタンスでいきたいですね」

北村さんのストーリー(後編)

MGと生きる私らしい明日のために

Motto Good Day! :Vol.1 ピアノとMG

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Motto Good Day! :Vol.2 楽しいことを楽しめるように

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Motto Good Day!:Vol.3 できることを探し、可能性広げよう

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Motto Good Day!:Vol.4 明るくいればきっと良いことがある、家族の支えと未来への想い

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