MGの管理には難しい点があります。もっと率直に医師と付き合うことが役に立つかもしれません。
重症筋無力症(MG)は、診断と管理が難しい疾患です1。MGと診断されるまで時間がかかりましたか?MGと診断されるまでに、何人の医師の診察を受けましたか?
こうした経験はMGの患者さんに共通しています。MGは希少疾患であること、そして多くの場合、症状は人によって、または日によっても異なることが、発見と診断を難しくしています1,2。もしMGだと診断がついたとしても、予測できない慢性疾患を管理するというMG特有の課題があるということに気づくかもしれません。
MGの長期的な管理には、あなたと治療チームとの強力なパートナーシップが必要です。医師と上手に付き合うためのヒントについて、MGを専門とする脳神経内科医のエマ・チャファロニ氏とニラジャ・スレシュ氏、そして患者支援の専門家であるステイシー・バチスタ氏にお話をうかがいました。
医療におけるセルフ・アドボカシーはとても重要です。 ステファニー(MG患者さん) ワシントン州
MGに詳しい医師を探す
継続的に診てくれる医師を探しているなら、MGに詳しい医師を見つけるのが良いでしょう。MGの患者団体を探すことも一つの方法でしょう。もし既にMGの患者団体に参加しているなら、他のメンバーに話を聞いてみるのもいいでしょう。
引っ越し先の地域でMGに詳しい医師を新しく探す必要がある場合は、今の担当医に紹介してもらうことも検討してみましょう。転居先の病院の脳神経内科を調べ、専門医を見つけるのもいいでしょう。
スレシュ氏は次のように話します。「治療チーム全体の自由なコミュニケーションはとても重要です。複数の異なる医師から同時に検査を受けたり、医師を転々としたりすることは、混乱を招きかねません」

医師に症状を詳細に伝える
MGの症状は把握が難しく、時間とともに、日によっても変化するため、医師は、患者さんが訴える症状を考慮に入れて、MGの治療計画を立てたり調整したりします1。受診時に、次のヒントを参考にしてみてください。
症状を簡潔に整理して書き出しておけば、診察の際に医師と共有することができます。次のようなことを書き出してみましょう:症状が起こる頻度。症状がどのくらいひどいのか。症状が日によって良くなったり悪くなったりするか。症状がどのくらい継続するか。症状は一旦おさまり、また再発することはあるのか。
症状の経時変化を書き留めて、共有しましょう。そうすれば、経験している症状の変化やパターンを、あなたも医師も確認することができます。これには、日々の記録や日記として手書きで書き留める方法や、ボイスメモやカレンダー、メモなどのスマートフォンのアプリを利用する方法などがあります。同様に、MG-ADLのような自己評価ツールも、あなたと医師が、日々の生活が症状によってどのような影響を受けているかを把握するのに役立つでしょう。
前回の受診以降の症状を明確に伝えるようにしましょう。受診時に体調が良い場合でも、1週間前や1カ月前の症状は報告したほうがよいでしょう。
症状を詳細に伝えましょう。スレシュ氏によると、どのような症状が、日常生活にどんな影響を与えているかを説明してもらえると、医師は患者さんが経験してきたことをより理解でき、適切な治療計画を立てるのに役立てることができます。
スレシュ氏は次のように話します。「『こういった検査を全部しましたが、何も分かりませんでした』と言うより、『飲み込みにくい。話しにくいし呼吸が辛いです。椅子から立ち上がることはできますが、郵便受けまで歩くことはできません』と話してみましょう。症状によってできないことがあるなら、医師に伝えてください。そうすれば、医師は何か深刻なことが起こっていると分かり、治療をしっかり検討する必要があると考えることができます」
率直に正直に、自分の経験を医師に共有しましょう。 メレディス(MG患者さん) ミズーリ州
医師とともに、自分に合った治療を見つける
自分に適した治療を見つけるためには、自分の症状だけでなく、自分の健康、安心、幸せのためには、日常生活を送るうえで何が一番大切なことなのかを医師に率直に話してください。他にどんな疾患を抱えているか、どんな薬を服用しているかについても伝えましょう。こうした情報すべてをもとに、医師はあなたの治療管理計画を立てる上で最も適切な方法を決定します。
バチスタ氏は次のように話します。「適切な治療、そして今後のMGの管理方法を見つけるには、様々な選択肢を探して試す根気と意思が必要です。これまでの経験から、医師に率直に話すことが患者さんにとって良い結果になると思っています」
どんな症状の変化でも必ず医師に伝えることが重要です。その変化は、症状の悪化に至るものであったり、時にはクリーゼに至ることもあるからです。
新しいMG治療を開始する場合は、どんなことが期待されるか、副作用にはどんなものがあるかなど、疑問に思ったことは必ず医師に尋ねましょう。そして、治療開始後は、ご自身の経過や経験した副作用などを医師に伝えましょう。
自分のやるべき事をやり、医師を信頼しましょう。 エマ・チャファロニ氏(MG専門の脳神経内科医)
ニューヨーク州ロチェスター
自身のMGについて継続的に学ぶ
MGの診断を受けたのがかなり前でも、MGについて学び続けることは良いことです。チャファロニ氏は、MGの治療経験から支援グループに関するアドバイスまで、MGに関することを何でも医師に聞いてみることを患者さんにすすめています。自分で調べることも役に立ちます。ただし、信頼できる情報源を頼り、疑問がある場合は医師に尋ねましょう。
スレシュ氏は次のように話します。「ネット上には、混乱や誤解を招くような間違った情報がたくさんあります。ネット上で何かを読むと、よく自己診断したくなりますが、自分の症状がMGと関連があるかもしれませんが、関連がない別の疾患を患っている場合もあります。自分で調べることは自身の知識を深めることになるかもしれませんが、必ず守っていただきたいのは、医療チームと話すこと、教育ツールを活用すること、そして提供されたガイダンスに従うことです」
セカンドオピニオンを受けることを恐れない
新しい医師が、あなたの症状とMGがどう関連しているかをなかなか理解してくれない場合は、セカンドオピニオンを受けてもいいでしょう。
バチスタ氏は次のように話します。「MGは難しい病態ですが、管理する方法はあります。それには、管理について信念を持っている治療チームのサポートと協力が必要であり、その関係はパートナーシップであるべきです」
スレシュ氏も同意して次のように付け加えます。「一般的に医師は、患者さんがセカンドオピニオンを受けることを全く気にしません。私は、セカンドオピニオンが医師に対する不実だとは考えません」
医師には、率直に正直に話す
自分と医師との関係は素晴らしいと、MG患者のステファニーさんは話します。彼女はこの関係のおかげで、気になることを度々医師に共有しながら自分でも継続的にMGについて調べ、治療選択肢について話し合う際には話を聞いてもらえていると感じています。
ステファニーさんはこう話します。「医療におけるセルフ・アドボカシー(自己権利擁護)はとても重要です。私は自分の治療に対して自分の考えを述べる権利があると感じていますし、それは私にとってとても重要なことです」
同じくMG患者であるメレディスさんは、医師と協力的な関係を築くこと、つまり、説明責任を果たすこと、互いに尊重すること、率直になることが必要だと強調します。
そしてこう話します。「健康はその人自身のもので、誰のものでもありません。医師は毎日一緒にいるわけではないので、自分の経験は、率直に正直に、医師に伝えましょう」
スレシュ氏によると、たとえ小さな変化でも、伝えることで大きな違いが生まれます。
スレシュ氏は次のように話します。「力が弱くなっている、動きにくいなどの症状があるなら、医師に伝えることが重要です。歩行器や杖があれば、いつも使わないとしても、役に立つでしょう。ものが二重に見えるなら、眼鏡が必要かもしれません。こうした小さな変化が、生活の質を向上してくれるでしょう」