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ディスカッションガイド: 重症筋無力症について、子どもに説明する

7分で読めます

エミリー・エドリン博士は、米国イリノイ州にあるオークパーク行動医学の臨床健康心理士です。カリフォルニア州とコロラド州の小児病院で臨床プログラムのディレクターを務め、コロラド大学医学部の職員でもあります。米国の育児専門誌「Parents」でオンライン向けの育児コラムを執筆し、「Huffington Post」や「Good Housekeeping」などのオンラインサイトで子育ての専門家としても活躍中です。

CONTENTS

あなたが重症筋無力症(MG)と診断されたことに向き合いつつ、お子さんにMGについて説明する

あなた自身もMGをよく理解していないうちは、どんな風に対話を始め、何を伝えればいいか、どうすれば子どもをサポートできるか分からないかもしれません。このガイドは、実際に患者さんと接した経験に基づき、あらゆる年齢のお子さんと対話をするのに正直で支えとなる役立つツールを紹介しています。子どもへの伝え方については、ここで紹介する以外にも主治医からヒントを得られることもあるでしょう。

MGを抱えながら生活することの大変さを正直に伝えることで、
お子さんもあなたを信頼することができます。

エミリー・エドリン博士

ステップ1: 大事な話を切り出す

率直に簡潔に

対話を始めるのが難しいこともあります。MGという名前を覚えてもらい、それが身体にどんな影響を及ぼすかを説明することで、お子さんの理解が進むかもしれません。どれくらい詳しく説明するかはお子さんの年齢によりますが、次のことは伝えるようにしましょう。

  1. MGが身体にどのような影響を及ぼすか(たとえば、神経と筋肉のつなぎ目に異常が起こることについて説明します。絵を使ってもよいでしょう)
  2. 主治医とともにどのようにMGを管理しているのか
  3. 人にうつる病気ではないこと
  4. 元気そうに見えても完治することは少なく、調子が悪い日もあること
  5. 自分のペースで行動し計画を立てることで、MGであっても充実した楽しい生活を送ることができること

MGのために見た目や行動が少し違うことがあることを説明しておくと、お子さんは心の準備ができるでしょう。外見ではわからなくても身体がつらい、急に症状が変化するために、まるでジェットコースターに乗っているみたいに体調が急に良くなったり悪くなったりすることがあることなど、あなたが感じていることも説明しましょう。

MGを抱えて暮らす苦労を正直に伝えることで、お子さんもあなたを信頼することができます。大人がよかれと思って「すべてうまくいく」などと約束し、実際にはそうならなかった場合、お子さんは嘘をつかれたと思います。子どもを守れず心苦しく感じるかもしれませんが、正直に話すことで、「あなたなら乗り越えられる」とお子さんに伝えられ、またお子さんのあなたへの信頼感も高まります。

これは、私が親御さんにおすすめしている方法ですが、セカンドオピニオンを聞いてもよいでしょう。うちの子に病気の話はまだ早いのでは?理解できないのでは?と心配ならば、あなたの家族に最適な方法を主治医と話し合ってみてはいかがでしょうか。

発達段階のちがい

お子さんの年齢と発達に応じた対話のヒントをいくつかご紹介します。これらは、発達段階に応じた大まかな年齢別のアドバイスです。お子さんのことを一番よく知っているのはあなたですから、あなたが良いと思う方法で対話をしてみてください。ただし、難しい話をするときの方法については、かかりつけの小児科医に相談してアドバイスをもらうこともお勧めします。

就学前(3~5歳)

  • 身体について詳しく具体的に説明しましょう
  • この年齢では「ずっと続く」ことを理解できず、どう説明しても、病気は一時的なものだと思うかもしれません
  • 何度も説明が必要になることもあります

就学児(6~12歳)

  • MGが身体に及ぼす影響をより詳しく説明することができます
  • 死についてより知りたいと思う傾向にあるため、今後どうなるか質問されるかもしれません

思春期(13~18歳)

  • 答えがない大きな問いを投げかける可能性が高いでしょう(なぜ大切な人が希少疾患にかかるのかなど)
  • ネット検索などで自分で情報を集められるので、信頼できる情報源とそうでないものを子ども自身が見分けられるよう、手助けする準備をしておきましょう

ステップ 2: 大事な話をしたあと

予想される反応

子どもの反応はさまざまで、個人差が大きいかもしれません。幼い子どもの場合、遊びを通して難しい話を消化することもあります。ですから、MGの話をした後、子どもが何事もなかったように遊びだしても心配ありません。泣きだしたり、たくさん質問したりする子もいるでしょう。10代の子どもの場合、親と距離をとって殻にこもったり、逆に友人と過ごしたがったりすることがあります。これも全く普通の受け止め方です。お子さんの反応についてアドバイスが欲しければ、かかりつけの小児科医に相談するのもよいでしょう。

ステップ3: 対話をつづける

次にどうするか

「大事な話」ははじまりにすぎません。MGと暮らす日々がつづく限り、対話もつづきます。子どもや10代の若者は、より深刻な問題に関しては、いつ、どのように話しあうかについてなかなか決めることができない場合があります。辛抱強く接し、子どもに決めさせましょう。どれくらい詳しく知りたいかも聞きましょう。詳しく知りたがる子もいれば、知れば知るほど不安になるため、全体像だけわかればよいという子もいます。どちらもごく当然の反応です。子どもがより快適に感じるようにすれば、自分の力では変えがたい状況の中でも、子どもは自分でコントロールしている感覚を得ることができるはずです。

大人は子どもの質問を予想し、先回りして説明したがります。今回の場合は、お子さんが質問する気になったら、何を聞かれても答える用意があることを伝えましょう。子どもは時に、心の準備が出来てから質問をすることがあります。お子さんが悩み混乱して、質問を避けているように見える場合、準備ができたらいつでも聞いてと、やさしく声をかけましょう。

対話のテーマの一つは、あなたもお子さんもMGを完全にはコントロールできないということです。圧倒され自分が無力に思える状況では、強さと希望を見つけることが大切です。私が担当した患者さんたちは、年齢を問わず、状況を把握することでストレスに上手く対処できるようになっています。

お子さんが、どんな形であなたをサポートできるか、一緒に考えることもできます。ただし、私は子どもの世話をする方には、子どもに手助けを要求することで、かえって子どもに無力感を与えてしまわないよう注意を促しています。体調が悪い日に助けてもらう方法を子どもと相談しておくと、心強く感じられるかもしれません。

「彼女は知らないかもしれませんが、娘がいるからつらい日を乗り切れます」

レイチェル・H
テキサス州オースティン

お子さんが、どんな形であなたをサポートできるか、一緒に考えることもできます。ただし、私は、MG患者さんのお世話をする方には、お子さんには手助けを要求しないように促しています。それは、かえって子どもに無力感を与えてしまいかねないからです。体調が悪い日に助けてもらう方法を子どもと相談しておくと、心強く感じられるかもしれません。

特別な配慮

心配な場合

子どもの反応はさまざまで、どこまでが「正常」かには大きな幅があります。お子さんの様子に変わったところがないか注意し、おかしいと感じたら精神科やかかりつけの小児科などの医師に相談してみましょう。

対話をすることは難しいですが、話し合うことで距離が縮まるかもしれません。 対話をすることは難しいですが、話し合うことで距離が縮まるかもしれません。

対話は最初の一歩

親も祖父母も、子どもや孫にできる限りのことをしてやりたいと願うものです。こうした対話は、子どもが安心し希望を抱くことにつながります。ここに紹介したヒントや方針が、大事な対話をよりスムーズに進める上で役立つかもしれません。心を開いて率直に接することで、家族全員の距離をさらに縮め、強い絆で結びついて同じ旅路を歩むことができると、私は思っています。

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