重症筋無力症の基礎知識
重症筋無力症(Myasthenia Gravis)は、略してMGとも呼ばれます。主に筋力が著しく低下する疾患です1-3。顔や眼の筋力が低下することが多く、初期症状としてまぶたが下がる症状がよくみられます。また、眼球を動かす筋力が低下して、ものが二重に見えたり、ぼやけて見える症状もしばしばみられます。筋力の低下が手足におよぶこともあります3,4。うまく笑えない、噛みにくい、飲みこみにくい、息がしにくいといった症状が出る場合もあります4,5。MGは複雑な疾患で、人によって少しずつ症状が違います。
MGは自己免疫疾患3,6
免疫機能に異常が生じて過剰に免疫細胞が反応することからMGを発症します3。MGは遺伝しない(親から子へ伝わることはない)と言われており、伝染することもありません7,8。家族内で複数の人が発症するケースもまれにみられますが、その理由は十分解明されていません9。年齢や人種にかかわらず発症しますが、20~30歳の女性と50~60歳の男性にやや多く見られます4 。
MGは難病の一つで、米国内の患者さんは3万1,000~6万7,000人程度にとどまります10,11。日本の患者さんは2万9,000人程度と言われています21。希な疾患であることから、症状があってもすぐにはMGと診断されず、患者さんがいらだたしい思いをする場合もあります。診断されたら、MGに詳しい医師――多くのMG患者さんを治療した経験がある脳神経内科医――に診てもらうと良いでしょう。
MGは、自己免疫疾患のひとつで、末梢神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)に障害が生じる疾患です3。免疫系が筋肉を攻撃するため、神経からの情報が筋肉に正しく伝わらなくなり3,12-14、筋肉が思うように動かなくなります15。
MGの初期症状は、見過ごしてしまうこともあります。力が出ないのは睡眠不足だから、激しい運動をしすぎたから、食事に問題があるから、気分が落ち込んでいるから、などと自分で思い込んでしまうのです3。
さらには、1日のなかでも時間帯によって筋力低下の症状にばらつきがあったり、症状が体の一部に限られることもあります3,16。人によっても症状は異なります16,17。