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症状を評価するために医師が使用する 一般的なツールについて知りましょう

2020年9月 | 5 分で読めます
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医師があなたのMGの経過を把握するのに役立つツールについて学びましょう。

重症筋無力症(MG)患者さんは一人ひとり異なりますが、もっと元気になりたいという願いは共通です。自分の症状を継続的に記録することは、MGとの付き合いをコントロールすることにつながります。もちろんMGは、簡単にコントロールできる疾患ではありません。多くの症状は、日によって、あるいは1日の中でも変化します1。医師は、あなたの状態をより理解できるよう様々なツールを利用しています。

みなさんご存知のツールもいくつかあるかもしれません。初めて聞くツールもあるでしょう。こうしたツールについて詳しく知ることで、自身の状態をより効果的に医師と話し合うことができ、治療計画の何がうまくいっているのか、あるいはうまくいっていないのかを知り、将来の目標を医師と一緒に立てることが可能になります。

MG-ADLスケール2

MG-ADLスケールは、MGの症状の程度を評価するためのものです。質問票で8つの質問について答えることで、MGが日々どのような影響を及ぼしているかが分かります。臨床試験においても、MGの治療法が有効かどうかを判断するためにこのツールを使用しています。以下は、質問の1例です。

 
会話
0点
正常
1点
間欠的に不明瞭もしくは鼻声
2点
常に不明瞭
もしくは鼻声、しかし聞いて理解可能
3点
聞いて理解するのが困難

質問のほとんどは、呼吸、歯磨き、椅子からの立ち上がりなど簡単な動作に関するものです。最後の2つの質問は眼に関する質問です。ご存知のように、目に関連する症状はMGでは一般的な症状です1。結果を評価するには、各質問に対する現在の状態をスコア化し、8項目のスコアをすべて合計します。

スコアが低いほど症状が軽いということです。スコアが2点以上下がった場合は、治療がうまくいっている表れかもしれません3。スコアが上がり始めた場合は、医師に相談して、治療計画を変更すべきかどうか検討してもらいましょう3

MGの症状は良くなったり悪くなったりしますが、その傾向に注目する必要があります。
MG-ADLは、状態が体調の悪い日と比較してどうなのかを判断するのに役立ちます。

ニラジャ・S・スレシュ(医学博士)

MG-QOL15r4

もう一つの評価指標であるMG-QOL15rは、MGの症状が情緒面や自立能力にどう影響しているかを15項目で評価するものです。

ご存知のように、MGとともに生きることは簡単ではありません。ですから、MGが自立や心の健康にどのような影響を及ぼしているか認識することは大切なことです。このツールを定期的に活用すれば、あなたと医師は、あなたにとって何が最も大切かを知ることができるでしょう。そして、治療チームは、あなたのやりたいことを妨げている症状の緩和を目標に定めたMG管理計画を立てることができます。

MGFA Post Interventional Status5

MGFA Post Interventional Statusは、MGの治療がどれくらい有効であったか、あるいは有効でなかったかを評価するために臨床試験でよく使用されるツールです。

この評価指標は、本記事でご紹介しているツールの中で最も臨床向け(複雑で「医師向け」の)ツールです。ですが、MGの患者さんも参考にできることがあります。まず、1年以上MGの症状がない寛解の状態でも、MGの治療を受けていない場合と受けている場合で寛解のレベルを明確に区別しています。また、「軽微症状」も明確に区別されています。軽微症状とは、軽微な筋力低下は存在するが、日常生活には支障がない状態の事を示します。このツールは、MG患者さんと医師が、軽微症状についてより正確に話し合うのに役立ちます。

MGFA分類5

MG治療のための臨床試験に参加したことがある方は、MGFA分類をご存知かもしれません。これは、研究者が試験を正しく計画しようとするときに有用なツールです。

日本では、特定医療費(指定難病)の支給認定申請をし、医療費助成を受けるのにMGFA分類を記載する必要があるのでご存じの方も多いと思います。

MGFA分類には、大きく分けて5つのクラスがあります。分類の要約を以下に紹介します。

クラス 説明
1 眼筋筋力低下のみ
2 眼筋以外の軽度の筋力低下 ± 眼筋筋力低下
3 眼筋以外の中等度の筋力低下 ± 眼筋筋力低下
4 眼筋以外の高度の筋力低下 ± 眼筋筋力低下
5 気管内挿管しないと呼吸できない

経過を記録し、目標を設定しましょう

ツールを利用したことがない方は、本記事で紹介したツールを確認し、医師に相談するツールを決めてください。1つ以上のツールを定期的に使用することで、より効果的に経過を追うことができます。また、こうしたツールは、治療チームとの共通言語となり、相互理解を通して会話がスムーズになるかもしれません。

MGに関する知識を持っていれば、あなたは医師と一緒に今後の目標をより効果的に立てることができます。目標設定について詳しく知りたい方は、「治療目標を決めることが大切」をご参照ください。

  1. Gilhus NE. N Engl J Med. 2016;375(26):2570-2581.
  2. Wolfe GI, et al.Neurology. 1999;52(7):1487-1489.
  3. Barnett C, et al.Neurol Clin. 2018;36(2):339-353.
  4. Burns TM, et al.Muscle Nerve. 2016;54:1015-1022.
  5. Task Force of the Medical Scientific Advisory Board of the Myasthenia Gravis Foundation of America, et al. Neurology. 2000;55(1):16-23.

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