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重症筋無力症の患者さんを介護する方へ、考慮すべき5つのヒント

2022年2月 | 4分で読めます
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家事や雑用、用事をできるだけこなしながら、大切な人の介護もしたい…。重症筋無力症(MG)の患者さんの介護との両立で、やることが山積みになってしまうことも。

MG患者さんを介護する方々から、介護者がバランスのとれた生活をするための5つのヒントを伺いました。

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1. セルフケアを忘れない

MG患者さんの介護は大変なことが多いからこそ、介護する方は自分自身の気持ちにも配慮が必要です。セルフケアには、健康的な食事をとる、運動する、十分な睡眠をとるといったことも含まれます。あなたが元気であればあるほど、大切な人をしっかりと支えてあげることができるのです。

ご自身の性格やライフスタイルに応じて、前向きな気持ちになれる趣味を探してみましょう。自分は内向的な性格だと考えているスペンサーさんは、ひとりの時間を作って好きなことに打ち込むことでリフレッシュしています。一方、社交的なトラビスさんは、少し違います。自分から電話をかけて人に会う約束をしたり、夜に友だちと集まってゲームで遊んだり、サッカーをしたりしています。

アイリスさんは、夫のビクターさんがMGと診断されてから数年後、スキークラブに入りました。今は、新しい仲間と滑ることもあれば、なだらかな場所で夫とスキーを楽しむこともあります。ビクターさんは寛解していますが、斜面を滑るのはむずかしいからです。

「自分なりのやり方を探しているんです」新しい趣味について、アイリスさんはそう語ってくれました。

2. 感情を抑えない

介護していると、自分の心と身体の健康は後回しになりがちです。まわりの人も、介護者を献身的に尽くす「天使」のような存在とみなすことがあります。それは善意からの見方でしょうが、そのせいで介護者のあなたは、不平や不満を口にしてはいけないと感じるかもしれません。

けれど、あなたも助けを必要としていいのです。あなたご自身も、欲求や感情をもつひとりの人間なのです。ですから相手を尊重しつつ、MG患者さんに正直に気持ちを打ち明けましょう。

MG患者であるキャシーさんを診療する心理学者のダイアンさんは、患者さんと率直に話し合うことを提案しています。ただし、互いへの思いやりを忘れずに。彼女たち2人はこれを「優しい告白」と呼んでいます。

「相手への優しさがあれば、家事のようなデリケートな話題も、口論になったり怒って黙り込んだりすることなく話し合うことができます」とダイアンさんは語ります。

この方法は、スペンサーさんとMG患者のステファニーさんの間でも上手くいきました。おかげでデリケートな問題も抵抗なく話題にでき、何らかの答えが見つかったと言います。例えばあるときは、お手伝いさんを雇うことで家事をめぐる悩みを解決しました。現在は、2人で家事を分担しています。

3. ひとりで背負いこまない

つらいときには、家族や友人、地域の団体やMG関連の支援団体に助けを求めることが、セルフケアのために何より必要な場合もあります。

トラビスさんと妻のケイトさんは、MGをめぐる困難な問題に直面しときは、進んで家族の助けを求めることにしました。遠く離れたケイトさんの家族の近くに引っ越すという、思い切った方法をとったのです。

トラビスさんは、「助けを求めることには抵抗がありました。自分が弱い人間に思えたからです。でも、そうすることを学びました。人に助けてもらえると、ずいぶん楽になります。おかげで私たち夫婦は、彼女の家族とこれまで以上に良好な関係を築けています」 と語っています。

差し伸べられた手に頼ることで、負担が軽くなることもあります。ビクターさんがクリーゼ で入院したとき、アイリスさんの友人たちはお金を出し合って、好きなギフトを選べるようにしてくれたと言います。アイリスさんは、最初は遠慮していましたが、考えた末に、そのお金で夕食をテイクアウトすることにしました。

「いつも帰宅後にできあいの食事で済ませていたんです。大変な毎日のなかで、ひとつ楽しみができました」と彼女は語りました。

人に助けてもらえると、ずいぶん楽になります。

MG患者の介護者 トラビス(ワシントン州)

4. 頑張りすぎない

家事や用事をいくらやってもなくならず、途方に暮れることがあるかもしれません。そんな時は、自分のペースで行うか、時々少し休んで「自分の時間」を作るようにしてみましょう。

スペンサーさんは「燃え尽きてしまうことがあるかもしれませんが、必要な時には、1日ゆっくり過ごしましょう。日々やらなくてはいけないことに加え、仕事に子どもやペットの世話など、常に全てをこなすことはできません。別にそれでいいんです」と話します。

アイリスさんは定年を迎え、前より家事を気軽に考えるようになり、時間の使い方も上手くなったといいます。

今日できなくても明日がある。そう割り切ることにしました」と彼女は語ります。アイリスさんは、夫のビクターさんが散歩や運動の後で休憩する際に家事をこなすようになりました。

今日できなくても明日がある

MG患者の介護者 アイリス(イリノイ州)

5. 外出できなくても、孤立しないで

自然に触れ合ったり、友人や家族に会ったりするなど、社会とつながりを持つことは大事なことです。アイリスさんとビクターさんは、ネットワークを広げるために、介護者も参加するMG支援団体を立ち上げました。

スペンサーさんは、新型コロナが収束したら、以前からの趣味だったハイキングを再開したいと考えています。一方ステファニーさんは、友人たちと定期的にZoomでゲームを楽しむという2人に共通の趣味を計画しています――

孤立は精神的にもダメージを与えかねません。ですから、たとえ今はオンラインでも人とつながるようにして、希望を失わず前向きな気持ちで過ごすようにしましょう。

「MGでも生活は楽しめます。以前の生活とは違うかもしれませんが、充実した人生を送ることはできます」とトラビスさんは語りました。

  1. Simon EB, et al. Nat Hum Behav. 2020;4(1):100-110.
  2. Mikkelsen K, et al. Maturitas. 2017;106:48-56.
  3. Webber D, et al. SelfCare. 2013;4(5):101-106.

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