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重症筋無力症の患者さんを介助する方が燃え尽きないために ―予防のための10の方法

2022年11月 | 7分で読めます
CONTENTS

介助に追われていると感じたら、セルフケアを忘れないようにしましょう。いくつか方法をご紹介します。

重症筋無力症(MG)は患者さんの生活を変えるだけでなく、介助する方々の生活にも影響を与えます。大切な人がMGであるという事実に向き合うだけでなく、介助する者としてこれまで想定もしていなかった新たな責任を引き受けることになります。新たな仕事が増えたり主治医の予約を確認したりと、いろいろと頼りにされるだけでも重荷に感じることがあるかもしれません。

だからこそ、燃え尽きないよう意識しておくことが大切です。自分でセルフケアを実践することは、心身ともに健康的に過ごし、大切な人をきめ細かく介助することにもつながります。最後にご紹介するチェックリストと合わせて参考にしてください。

ここでは、MG患者さんを介助している3人の方(ダイアンさん、メアリーさん、クリスチャンさん)のお話から、介助の過程において困難を感じながらも介助と自分の心身の健康を上手に両立するヒントとなる10の項目をご紹介します。もしあなたが、介助と心身の健康の両立が困難だと感じているとしたら、ぜひ読んでみてください。

1.しっかりコミュニケーションをとる

まずは大切な人と遠慮せず話し合うことがとても大切です。クリスチャンさんは、MG患者である妻へのサポートについて話しながら、コミュニケーションの大切さを強調しました。

「とにかくコミュニケーションがすべてです」とクリスチャンさんは言います。「特に、家事の分担や、妻に思いがけず休息が必要になった時の手助けなどの際に、しっかりとコミュニケーションをとります。そうすることで、自分の心身の健康維持に必要な運動や気分転換に時間を確保することができ、彼女のケアだけでなく自分自身をケアすることにもつながります」と説明してくれました。

2.趣味に熱中してみる

時には、熱中できる趣味を見つけたり参加したりすることが、元気を取り戻すための最適な方法になることがあります。例えばクリスチャンさんは、ジムでの運動や軽いランニングができるよう早起きしているそうです。「やりたいことを一つ見つけ、そのための時間を作ります」と、趣味に没頭することがどれほど自分自身のケアにつながっているか話してくれました。

MG患者であるパートナーを介助するダイアンさんの場合も同様です。ダイアンさんは心身の健康とうまく付き合うため、数年前にランニングを始めたそうです。読書も、一人の時間があるときの楽しみの一つだと言います。

3.大切な人と一緒に趣味を楽しむ

一人で趣味を楽しむのもいいかもしれませんが、共通の趣味を持つことも素敵なことです。定年退職したメアリーさんは、MG患者である夫のジョンさんと多くの時間を過ごすうち、共通の趣味をいくつも見つけたと話します。ジョンさんの介助に加え、彼の側で自分も楽しむことが自身をケアする方法の一つになっているそうです。ただ介助するだけでなく、二人の関係性を大切にしているのです。

お互いサポートし合っていることが、役に立っていると思います。

メアリーさん
MG患者さんの介助者

メアリーさんは「共通して好きなことがたくさんあって、お互いサポートし合っていることが、役に立っていると思います。」と話してくれました。特に2人にとってリラックスできるのは音楽だそうで、ジョンさんが入院している間は二人でミュージックビデオを繰り返し観ていたと振り返りました。

4.定期的に自分自身をチェックする

MG患者さんを初めて介助する方も、長年介助をしている方も、自分の気持ちを常に把握し、見直すことを意識してみましょう。クリスチャンさんは、介助を続けていく上での心の準備を整えること、そのためにできることを何でもやっておくことで、困難な状況になった時もうまく対処できると話します。妻がMGで不調を感じている時の様子を話しながら、「大切な人のそんな姿を見るのは辛いものです」と話してくれました。

介助時の課題に対処できるよう心の準備を積み重ねていくことは、ストレスを和らげるだけでなく、しっかりセルフケアするのにも役立つでしょう(本ページ末で燃え尽き症候群を防ぐためのチェックリストをダウンロードすることができます)。日記を書いたり瞑想したりすることは自分自身の気持ちを確かめる効果的な方法です。

5.自分の生活における大きな変化を認識する

MGのない生活から、MGとともに暮らす生活へ。その変化を受け入れることは介助者にとっても大切です。介助している3人全員が、MGとは何か、MG患者さんをどうケアすればよいかを学んでいくこと同様、何が変わったのか、日常生活がどう影響を受けたかを理解することが重要だと話してくれました。

メアリーさんは、一番大変だったことを振り返りながら「精神的な部分のほうが大きいですね。以前のようにはいかないことに慣れる必要があります」と語ります。

自分自身を受け入れる練習をすることは、緊張や燃え尽き感を和らげるのに役立つかもしれません。クリスチャンさんは「この生活は、ほとんどの人が経験するような普通の生活とは異なります」と話し、自分が置かれている独特な状況を認識し、必要に応じてセルフケアを優先させることの必要性を強調しました。

6.家族、友人、周りの人に頼る

家族や信頼できる友人に相談して自分の気持ちを打ち明けたり、言葉をかけてもらったりすることで、途方に暮れていた気持ちが少し楽になるかもしれません。クリスチャンさんは、自身と妻の生活に対する周囲のサポートに感謝しながら「サポートしてくれる家族がいることは本当に幸せなことです」と話してくれました。

また、すべてをやりくりすることが難しいと感じているなら、遠慮せず誰かに頼りましょう。例えばメアリーさんと夫が共に新型コロナウイルス感染症と診断され、夫が入院することになった時には、介助を助けてもらうために娘さんに頼りました。

「娘は仕事を休み、家族や子どもを家に残してこなければなりませんでした。毎朝起きると病院に向かい、夫に付き添ってくれました。彼女の献身的な協力は一生忘れません」」とメアリーさんは言います。

身近な場所にも、利用したことのない支援があるかもしれません。ダイアンさんは、娘の子守りから、新型コロナウイルスによるパンデミック中の買い物まで、地域の人たちが様々な形で支援してくれたと話してくれました。

7.他の介助者から学ぶ

あなたの経験を理解してくれる同じ立場の人とつながりを持つことで、気づきが得られるかもしれません。メアリーさんは、夫と娘と一緒にMGに関する講演会に参加し、そこで介助する方向けのミーティングに参加したことを話してくれました。「ここには自分たちのことをわかってくれる人たちがいる!と思いました。本当によかったです」と振り返ります。

8.自分の健康を大切にすることを忘れない

あなた自身の心身の健康に気を配ることを忘れないようにしましょう。クリスチャンさんは、特に大変な時期にストレス性発疹が出た経験から、言うべきことは声に出し、医師に相談する必要性に気づいたと言います。「身体の声に耳を傾け、ささいなことでも自分にとって必要なことを素直に受け入れましょう。そして、ちゃんと相手に伝えることで、解決する方法を見つけられるでしょう」とクリスチャンさんは語ります。

介助する側の要望を遠慮せず伝えることは、とても大切なことです。

ダイアンさん
MG患者さんの介助者

ダイアンさんは、パートナーのケアと自分自身のケアを両立させる方法について説明しながら、同じような考えを話してくれました。「介助する側の要望を遠慮せず伝えることは、とても大切なことです。罪悪感を持つ必要はありません」と彼女は言います。「(相手は)負担をかけたくないと思っています。あなたの要望を伝えれば、お互いさま、ということになるし、私たちにとっても良いことです」

9.大切な人を後押しする

多くの責任が介助する方にかかっているかもしれませんが、MG患者さんも自分で責任を持ってやりたいこともあるでしょう。MG患者さんが自分自身でできるケアを気兼ねなく続けられるように後押ししてあげましょう。患者さんがどんなことに自信を持っているのかを把握しておくことで、必要以上のお手伝いをしなくても良くなります。クリスチャンさんは、妻とそのバランスを取る方法をよく分かっている、と言います。「彼女はとても強い人なのです。自分の思うところまでやり通そうとするでしょう」

10.大切な人に寄り添う

最後に、あなたがサポートしている大切な人も、同様にあなたの心強い味方だということを忘れないでください。コミュニケーションをとることが大切なのと同じように、介助する側としての役割を離れて大切な人と充実した時間を過ごすこともストレス解消に役立つかもしれません。

ダイアンさんにとって、パートナーとの関係は介助者として心身ともに健康であることを管理するための基本だと言います。「お互いに愛と尊重の念をもって接しています。今でも時々、不満を感じたり疲れ切ってしまったりすることはありますが、この関係性があればかなりのことは解決することができます」と説明してくれました。

これからの暮らしを充実させていくために、次の燃え尽き症候群を予防するためのチェックリストをダウンロードしてみましょう。燃え尽き感の兆候を見極め、検討すべきセルフケアを特定するのに役立ちます。

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燃え尽き感の徴候と、乗り切るためのヒントを確認してみましょう。

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