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重症筋無力症(MG)との暮らしの中で
アップダウンする自己肯定感に対処する

2022年8月 | 7分で読めます
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MGの症状と付き合っていく中で、ありのままの自分を肯定することができないと感じることがあるかもしれません。アップダウンする自己肯定感に対処するためのヒントをいくつかご紹介します。

MGのような自己免疫疾患とともに生きる場合、症状や重症度の変化によって気分や自己肯定感が変わるのを感じるかもしれません。こうした感情は、症状、治療、ライフスタイルの変化に対して自分の心と身体がどのように反応するかわからない、という未知の状況に関係している可能性があります。ここでは、MGとともに生きる人々からのアドバイスをご紹介します。このような感情や、アップダウンする自己肯定感に対処するために役立つでしょう。

自己免疫疾患の患者さんは、自分の身体に何かの形で失望させられるという事実にしばしば動揺しています。

キャサリン
自らもMG患者である認定臨床心理カウンセラー

MG による生活の変化は、患者の自己肯定感や身体のイメージにしばしば影響を与えることがある、と認定臨床心理カウンセラーのキャサリンさんは話します。 自身も眼筋型MGで、自己免疫疾患の患者さんを対象にカウンセリングを行っているキャサリンさんは、診断結果を告げられたときに感じる怒り、孤独感、無力感、裏切られたような気持ちがよくわかります。「自己免疫疾患の患者さんは、自分の身体に何かの形で失望させられるという事実にしばしば動揺しています。ある意味、自分が何か間違ったことをしてしまったのではないか、自分がコントロールを失ってしまったのではないかと感じているのです」

*眼筋型MGと全身型MGでは利用できる治療薬が異なります。ご自身の治療法に関して詳しく相談されたい患者様は主治医の先生にご相談ください。

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こちらの「セルフケアワークシート」を使って、気持ちを元気にする方法を見つけましょう。

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自己肯定感とMG

筋力低下、眼の症状、疲労は自己肯定感を損なう一因となりうるMGの一般的な症状です1。ニューヨーク在住のシンガーソングライターで全身型MGとともに暮らすアリシアさんは、自分の自己肯定感と身体イメージが、MGによってもたらされるさまざまな変化によって影響を受けたと感じています。

「2018年に最初に気づいた症状は、まぶたが下がったことでした。ものが二重に見えるという症状はそれほど気になりませんでしたが、自分の目の外見が非常に気になりました1。写真を撮るときや他の人と一緒にいるときに、自分が他の人にどう見られるのかとても気になりました」

アリシアさんは、周囲の人たちに自分がどう見られているのかという思いが、フラストレーションの原因だったと説明します。「実際に私は以前の自分から変わってしまいました。そして、まだそれに慣れようとしているところです」

キャサリンさんも、眼筋型MG による見た目の変化に悩んでいます。「左目の筋力が弱いので、自分の姿を画面上で見るのがつらいです。疲労によってより顕著になるため、そんな時に自分の姿を写真やビデオ通話で見るのは非常につらいです」とキャサリンは語りました。「でも、自分の目がどのように見えるか気にしすぎないようにしています」

また、順応するのが難しいのは見た目の変化だけではありません。アリシアさんは、疲労を感じた時のために、自宅内にさまざまなグッズを用意しています。

「MGと暮らし始める前にはなかったものが家の中にある、ということに慣れようとしています」とアリシアさんは教えてくれました。「キッチンには、皿洗いのときに座れるように椅子を置いています。うちに来た人たちにそうしたものを見られることが気にならなくなるまで、しばらく時間がかかりました。椅子は必要だし、シャワーの時の椅子も必要です。それが今の私の現実です」

気持ちを元気づける

「自分の写真を見て、これは一体誰だろう、と思うことがあります」とアリシアさんは話します。「自分が自分に見えないと思ってしまう時がいちばん嫌なので、自分らしくいられるようにする方法を見つけました」

アリシアさんは、その一つが趣味に打ち込むことだと教えてくれました。精神的に「ダメな」日には、文章を書く、作曲する、絵を描くなど、クリエイティブなことをするそうです。「創造力を駆使して芸術的なことをしているときがいちばん自分らしく感じられるので、できるだけそのような時を過ごすことが助けになります」

気持ちを元気づけるために、アリシアさんは調子の良い日も悪い日もソーシャルメディアに投稿しています。「ソーシャルメディアでは動画で面白いこともできますし、自分の経験を共有することもできます。動画づくりで良い気分になることができます」

アリシアさんは、大好きな人たちや楽しかったひとときを思い出すような料理をつくることも気に入っているそうです。「楽しい思い出につながる一皿をつくるとき、そのときの幸せな精神状態が戻ってきます」

気分が良くなるようなことに打ち込むことは、悲しい気持ちや不満な気持ちを小さくすることに役立つかもしれません2。絵を描く、動画を制作する、好きな料理をつくる、そのほかの何でもかまいません。元気が出るような活動を日々の中に取り入れるようにしましょう。

強力なサポート体制を構築する

自ら自己肯定感を高めようとすることに加え、頼りになるサポート体制を構築しておくことも役に立つでしょう。

MGと暮らす多くの人が、自分の身近な人たちがMGとは何か、かれらにどのような影響があるのかを理解していないと感じている可能性があります。そのため、自分の気持ち、自分ができること・できないこと、悩みなどについて率直に話してみることが重要です3。こちらの「重症筋無力症について家族や親しい友人に説明する」で紹介しているヒントをご参照ください。

生活の変化に関して、MGの患者さんと患者さんをサポートする人たちの両方が持つ不安を和らげるには、オープンに話し合うことが役に立つかもしれません。キャサリンさんは「私のお気に入りのフレーズは『お手伝いできることはありますか?』です。サポートをしている皆さんにお勧めしていることは、MGと暮らす大切な人に手 伝ってほしいことがあることを理解し、必要なことを安心して口にできるようにすることです。」と言います。キャサリンさんは、グループでレストランに行くときの例を話してくれました。「私の友人たちは、レストランでは私が一番に座る場所を選ぶことに対して理解してくれています。目に最も刺激の少ない、窓を背にした席を選びたいからです。みんな待ってくれますし、それが普通に受け入れられています」

大切な人がMGとともに生きるライフスタイルに慣れるにつれて、サポートする人たちもMGに関する知識が深まり、もっと役に立つ提案や積極的な行動ができるようになるかもしれません。「調子の良い日の自分を撮影しておけば、調子の悪い日に振り返ることができるのではないか、と親しい友人が提案してくれました」とアリシアは話します。「調子のよい日に撮影したビデオを友人に送りました。それから間もなく、とても調子が悪い日がありました。友人は、また良い日がやってくることを私が思い出せるように、そのビデオを送ってきてくれました」

自分の状態は今も変わりませんが、今の自分のベストを尽くしたいと思います。

アリシア
MGとともに生きる患者さん

自分にも周りにも正直に

MGと暮らす人の中には、アップダウンする自己肯定感への対処やセルフケアの実践が簡単ではないと感じる人もいるかもしれません。アリシアさんは、自分の身体の変化を受け入れる方法を見つけることの重要性について話してくれました。

「それは、簡単なことではありません。指をパチンと鳴らせば受け入れられる、というものではありません。自分の状態は今も変わりませんが、今の自分のベストを尽くしたいと思います」とアリシアさんは言います。それは、現在の状況を別の角度から見てみる、ということかもしれません。「小さくてもうまくいったことを見つけ、自分にできることは何でも、それが冒険に満ちたものであるかのように取り組むのです」

家族や親しい友人に正直に話すことで、前向きな気持ちになれないときでもより良い見方を見つける手助けをしてもらえるかもしれません。「一緒に過ごすときに車いすを使わなければならなかったり、疲れて休まなければならなかったりしても大丈夫。こんな時に、大切な人たちに何を言われるか、どう思われるかを気に病むことはやめることにしました。」

キャサリンさんは「自己肯定感に悩んでいる人に対して、元気そうね、とか全て上手くいくよ、と声をかけるだけでは効果はありません」と話します。「これは継続的にやっていかなければならないものです」

セルフケアの実践方法についてもっと知りたい場合は、日記を書く際に役立つ質問や、自己肯定感を高めるためのヒントなどが記載されているセルフケアワークシートをダウンロードしましょう。

  1. Jeong A, et al. PLoS ONE 13(11) : e0206754.
  2. Nimrod G, et al. Journal of Leisure Research. 2012; 44(4):419-449.
  3. Law N, et al. Neurol Ther. 2021;10:1103-1125. 

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