治療目標を立てれば、現実を見据えて一歩ずつ前進し、経過を把握できます。ここでは、目標を設定する方法を紹介します。
重症筋無力症(MG)の治療を始めるにあたり、希望とともに現実的な視点をもっておくことが望ましいです。MGは複雑な疾患で、症状には個人差があります。しっかり経過を追い、治療や経過について主治医と話し合うことが大切です。気になることがあれば、遠慮なく相談しましょう。問題があれば、必ずすぐに主治医に伝えることが重要です1。
目標1:生活に支障がない状態を目指す
MG患者さんにとって大きな目標は、「軽微症状」と呼ばれる状態に達することです。軽微症状は、日常生活の動作に支障がないことをさし、多少の筋力低下やまぶたが下がることがあるかもしれませんが、日常生活の動作に制約を感じることはない状態です。軽微症状であれば、歩行、食事、運転、軽作業を伴う仕事に支障が出ることは少なく――それどころか、軽い運動は症状改善に役立つ場合もあります。この状態であれば、今の治療で上手くいっているということです1。
MGと最初に診断されたとき、患者さんの胸に浮かぶ願いはひとつ。この病気を治したい!――。そう思うのも無理のないことですが、この疾患について学び、自分の症状への理解が深まるにつれて、適切な治療で軽微症状を目ざす方が、身近な目標だと感じるでしょう。その方がより現実的で、日常生活の質の向上につながるのではないでしょうか。
寛解について:寛解とは筋力低下などMGの症状が全くない状態をさします。(わずかな閉眼力の低下はあってもいい)。薬による治療の必要はありません。寛解を達成するのは非常に困難ですが、達成できればそれが最良の予後です1。
目標2:自己ベストを目指す(MG-ADLスケールのスコアを下げる)
8つの質問を使ってMGの症状の重症度を評価する簡単な調査票があります。これは、MG-ADL(重症筋無力症日常生活動作)スケールと呼ばれます。このスケールでは、目、顔、首/のど、胸、腕、手、足の筋力がどの程度低下しているかを評価します。このスケールを使って、治療薬による効果を判定することもできます。スコアは0~24点で、小さいほど症状が軽微です。
目標3:クリーゼを防ぐ
MG患者さんのうち15~20%が、少なくとも1度はクリーゼを経験するといわれます3。そのため、クリーゼがどういったもので、どう対処すればよいか知っておくことは大切です。MGクリーゼは、呼吸困難により人工呼吸器が必要になる重篤なMG再燃をさします。突然起きることもあれば、徐々に症状が悪化する場合もあります1。クリーゼに陥ると、以下の症状の一部またはすべてがあらわれます。