重症筋無力症(MG)とともに日々を過ごす人にとって、何気ない日常の行動に労力がかかってしまうことも少なくありません。そんな時は、自分に合った便利グッズを見つけたり、普段使っている道具の使い方を工夫したりすることで生活が楽になることがあります。
MG患者さんであるNPO法人筋無力症患者会 理事長の恒川 礼子さんにご協力いただき、毎日の生活に役立つおすすめグッズや普段から使用するものを選ぶ時のポイントを伺いました。これらの情報を参考にすることで、日々のクオリティオブライフ(QOL)を少しでも向上させることができるかもしれません。
もの選びのポイント①
MG症状である筋力の低下で、物がつかみづらい、握りづらいと感じることがよくあります。また、毎日の食事で使う食器やカトラリーでも、使うときに以下のようなポイントを意識することで、より快適に飲食を楽しむことができるでしょう。
● マグカップ
見た目がおしゃれな持ち手の小さいマグカップは、指先に力が入らない時にはとても持ちにくいもの。がっちりと掴める取っ手があり、あまり重くないものが良いようです。ただ、恒川さんは「楽だからと言ってプラスチックだと気持ちも上がらない」と言います。陶器でも軽くて丈夫なものも市販されていますので、ご自身にあったものを探してみましょう。
- 取っ手の部分に4本指が入る
- 取っ手の上部に、ある程度の太さがあり親指を置く場所がある
- 重すぎない
- ツルツルした材質は避ける
● カトラリー
お箸やフォークには、様々な形状があります。例えばお箸なら、指に触れる部分がざらざらとして滑りにくい材質のものや、角があって転がりづらいものがおススメ。フォークなら、先端がとがっていて食べ物を刺しやすいものや、麺類を食べる時にはすくいやすいようにある程度の隙間があるものなど、何を食べるかによって使うものを選ぶこともポイント。恒川さんは「本当に自分のからだに合うものを選ぶだけで負荷がちがいます」と教えてくれました。
- 箸:指に触れる部分、食べ物をつかむ部分が滑りにくい
- 箸:角があって転がりにくい
- フォーク:先端がとがっていて食べ物を刺しやすい
- フォーク:麺類の場合は麵がすくえる隙間がある
もの選びのポイント②
● リュック
荷物が多い時やどんな外出にもリュックは多くの人が愛用しています。最近は様々なデザイン、形のリュックが販売されています。 ショルダーストラップ(肩ひも)が太めのものや、ヒップベルト(腰ひも)がついているものを選ぶと、荷物が身体に固定され、負担が軽減されます。
- ショルダーストラップ(肩ひも)が太めのもの
- ヒップベルト(腰ひも)がついているもの
もの選びのポイント③
● 下着
毎日必ず使う下着も、体調に合わせて変えることを検討しても良いかもしれません。体調が良くない時は、特に身体を締め付けないものを選ぶと良いでしょう。特に女性の場合、ブラジャーはワイヤーレスのものを使用することで呼吸しやすくなり、身体への負担が軽減されます。また、アンダーのサイズにゆとりのあるものを選ぶのも良いでしょう。
- 身体をあまり締め付けないもの
- 女性の場合:ブラジャーはワイヤーレスでアンダーのサイズにゆとりのあるもの
ここでご紹介したものに限らず、日々の生活が不自由だと感じる場合は、様々なグッズを試したり、暮らしの道具に工夫を取り入れたりしてみてください。使いやすいと感じるポイントを自分なりに発見していくのも楽しいかもしれません。この症状だからこのグッズという決まったものはありませんし、以前に使っていたものが今でもベストというわけではありません。今の自分が使って心地よいものを、その時々に合わせて選ぶのがポイントです。
恒川さんは「しんどかったら物に合わせて無理するのではなく、物を合わせる」というアドバイスをしてくれました。「洗濯物は高いところに干すのが当たり前だと思ってしまいますが、しんどいようなら肩より下に干せばいいのです」。このように、普段の生活の中で発想の転換をしながら、自分の状態に合わせた工夫やグッズを利用することで、MGと暮らす日々を少しでも楽しく、過ごしやすいものにしてみてください。