専門医が使うツールを使って、自分の症状を記録しよう

2020年7月 | 5 分で読めます

症状の把握に役立つ調査票

重症筋無力症(MG)の患者さんの症状は1人ひとりちがいますが、よくなりたいという気持ちは皆同じです。症状の推移を記録すれば、経過を管理しやすくなります。多くの症状は日によって異なり、1日のなかでも変動がありますので、簡単なことではありません。1 専門医は、あなたの状態を知る上で役立つ様々なツールを持っています。

知っているものもあれば、初めて聞くものもあるかもしれません。ツールに詳しくなれば、今の自分の状態を主治医と細かく相談し、治療計画のどこが上手くいき、どこに問題があるか見きわめ、一緒に今後の目標を設定することができます。

重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スケール2

MG-ADLスケールは、MGの症状の重症度を評価する簡単な調査票です。8つの質問に答えることで、MGが日常生活に及ぼす影響を明らかにできます。このツールは、治療効果を評価するため臨床試験でも活用されています。質問のひとつは、次のようなものです。

点数
会話
0
正常
1
間欠的に不明瞭もしくは鼻声
2
常に不明瞭もしくは鼻声、しかし聞いて理解可能
3
聞いて理解するのが困難

質問の多くは、呼吸、歯磨き、椅子からの立ち上がりなど簡単な動作に関するものです。最後の2問は眼に関するものです。ご存知のように、MGは眼に症状があらわれることが多いからです。1 主治医と一緒に、MG-ADLスケールの各質問について今の状態を評価し、点数を合計して結果を出します。

合計点数が低いほど軽症です。合計点数が2点以上下がった場合、治療が順調に進んでいる証拠かもしれません。3 合計点数が上がってきたら、治療計画を変更する必要がないか主治医と話し合いましょう。3

pdf-.jpg

MG-ADLスケールをダウンロードして印刷し、主治医と話し合いましょう。

MGの症状は株の値動きに似ています。変動はあるけれど、トレンドラインに注目することです。MG-ADLスケールは、主治医が、単に調子が悪い日と症状悪化を見分ける助けになります。 ニラジャ・S・スレシュ(医学博士)

15項目の重症筋無力症生活の質(QOL)スケール改訂版(MG-QOL15r)4

もうひとつの検査であるMG-QOL15rは、MGの症状が心の健康と自立した生活を営む能力に与える影響を評価する、15項目から成る調査票です。

MGとともに生きるのは時に困難なことです。そのため、MGが自立した生活と心の健康に与える影響を把握することが重要です。この調査票に定期的に回答することで、あなたが一番困っている問題を明らかにできます。治療チームはこれを参考にして、あなたが望む活動の妨げになる症状を軽減するための管理計画を立てられます。

pdf-.jpg

MG-QOL15r スケールをダウンロードして印刷し、主治医と話し合いましょう。

介入後のステータス(PIS)5

PIS分類は臨床試験でよく使われるツールで、治療がどの程度効果をあげたか評価するものです。MGの治療を一度も受けていない場合、PIS分類はまだ使えません。

PIS分類は、この記事で扱う中で最も臨床的(難解で医学的)なツールです。とはいえ、このツールは2つの形でMG患者さんに役立つ可能性があります。寛解中――ほとんどまたは全く症状がない――であるか、寛解を目指せる状態にある場合、PIS分類を使って2種類の寛解の段階を区別できます。また、3段階の「軽微症状」も分かりやすく示すことができます。軽微症状とは基本的に、MGのせいで日常生活が制限されることはないけれど、一定の筋力低下が見られる状態を指します。PIS分類の3段階を使って、軽微症状について主治医と的確な話し合いを行えます。

pdf-.jpg

旅行に備えて、計画づくりに役立つヒントを学び、荷造りのチェックリストをダウンロードして記載内容を確認しましょう。

今すぐダウンロード

アメリカ重症筋無力症財団(MGFA)臨床分類5

MG治療薬の臨床試験に参加したことがある方は、MGFA臨床分類を聞いたことがあるかもしれません。この分類は、似通った症状を示す患者さんの病型を区別するもので、臨床研究のデザインを正確に設定する上で役に立つツールです。

臨床的なツールですが、患者さんはこれを使って自分の臨床分類を知ることができます。

MGFA臨床分類には5つのクラスがあります。各クラスの詳しい定義を記載したPDFを、MFGAが印刷できる形で提供していますが、次のようにまとめられます。

クラス
定義
1
眼筋筋力低下
2
眼以外の筋の軽度の筋力低下、眼筋筋力低下があってもよく、その程度は問わない
3
眼以外の筋の中等度の筋力低下、眼筋筋力低下があってもよく、その程度は問わない
4
眼以外の筋の高度の筋力低下、眼の症状の程度は問わない
5
気管内挿管された状態

症状の経過を記録し、目標を設定しよう

まだご覧になっていない方は、この記事で紹介したツールに目を通してください。主治医と相談したいツールを決めましょう。1種類以上のツールを定期的に活用すれば、症状を細かく把握できます。共通の表現を使って話せるため、互いの理解が深まり治療チームに相談しやすくなります。

MGに関する知識があれば、主治医と一層効果的に協力して今後の目標を設定できます。目標設定について詳しくは、「治療目標を決めることが大切」をお読みください。

監修:国際医療福祉大学医学部

   脳神経内科主任教授 村井弘之 先生 

  • ウルフ GI, ら. 神経学.1999;52(7):1487-1489.
  • ギルフス NE. N エングル J メド 2016;375(26):2570-2581.
  • バーネットC、他のニューロルクリン。2018;36(2):339-353.
  • TM、他の筋肉神経を燃やす。2016;54:1015-1022.
  • アメリカの筋無力症財団の医学科学諮問委員会のタスクフォース、他の神経学。2000;55(1):16-23.

あなたにおすすめする記事

症状を共有してMG研究に役立てよう

症状を共有してMG研究に役立てよう

3 分で読めます
治療目標を決めることが大切

治療目標を決めることが大切

5分で読めます
重症筋無力症とその発症の仕組みは?

重症筋無力症とその発症の仕組みは?

4分で読めます